
215点の作品が応募した小説部門で最優秀となる部門賞を受賞

2025年11月9日(土)に、東京のアルカディア市ヶ谷にて表彰式が開催され、東様も受賞のスピーチをされました。
心底から安らいでくつろげる夢の星
十年ほど前、ガンのため、食道すべてを摘出した。手術がおわって少しずつ麻酔が減らされてゆくにつれ、痛みが徐々に増してきた。指先をちょっと動かしても、全身に稲妻が走りぬけ、身うごき一つできなくなった。
そんなとき、いきなり瞼に浮かんできたのは、脳性マヒで夭折した姪っ子の顔だった。 手足はまったく動かせず、そのうえひと言もしゃべれなかった。けれども表情はほんとに豊かで、うれしいときは大口で笑い(声はまったく出せなかったが)、悲しいときはベソをかき、くやしいときは歯をかみしめた。
そんなわけで夏場には、蚊に刺されても追っぱらえず、かゆくなっても掻くことができず、それをだれにも告げられなかった。
この歯がゆさ、もどかしさを、どうにか文字にして、ぬぐってやりたい。うすっぺらな紙だけれどきっちり言葉に書きあらわして、ウソでもいいから自分の足で地べたをしっかり歩かせてやりたい。
そんな思いをたっぷり込めて書きだしてみたものの、どうやら救われたのは私のほうで、わだかまりというか悔しさというか、そんなものを少しばかりゴマかすことができただけ。 神も仏も信じていないが、宇宙は果てしないというんだから、この世であまり恵まれなかったひとたちのタマシイが、心底から安らいで、くつろげるような夢の星がひとつくらいあってもいいんじゃないかと思っている。
ほんとうに、ありがとうございました。
(『自費出版年鑑2025』2025年11月 NPO法人日本自費出版ネットワーク 企画,サンライズ出版 編 より転載)
「(前略)そして読了した時、私は、その少女や家族を身内に抱え込んでいた。一見質素なだけの製本が、この小説の必然なのだ、と了解していた。薄いのに厚く、短いのに長大な、まるでこの少女の人生のような作品のありように魅せられて、数多大作力作があるなかで、これを小説部門賞に推すと決した次第」
(『自費出版年鑑2025』2025年11月 NPO法人日本自費出版ネットワーク 企画,サンライズ出版 編 より転載)
『自費出版年鑑 2025』のご購入について(サンライズ出版)
https://www.sunrise-pub.co.jp/isbn978-4-88325-860-4/



2025/12/4更新